「保護犬」を迎える②~フィラリア症検査や治療について~(JAMC宮古島シェルタークリニックより)
「保護犬」を迎えられるご家族が増え、とても喜ばしい状況の中で、ご不安やご心配な点を解消できればとの思いで前回は「保護犬」を迎えるにあたっての注意点や「保護犬」を迎えるまでの流れに関するお話をさせていただきました。(こちらの記事)
今回は「保護犬」を迎えるにあたって知っておきたいこと、「フィラリア症」についてお話しします。
フィラリア症は、予防の普及により現在ではあまり遭遇しない病気ではありますが、地域によっては未だ多くみられる病気です。「保護犬」のようにもともと外の世界で予防を受けずに生活していた犬には認められることがあります。また、完全室内飼いでも蚊に刺される危険はあり、かかりうる病気です。もし自分が受け入れようとしている子がフィラリア症を患っていたらどうしたらよいのか、ご不安なお気持ちもあるかと思います。フィラリア症に関する記載は以前のコンテンツ「犬のフィラリア症予防って大切なの?」をご参照いただき、今回は検査方法や治療方法に関してもう少し詳しくお話しします。
フィラリア症は、感染犬⇒蚊(蚊の中でミクロフィラリアが感染幼虫になる)⇒非感染犬⇒肺動脈や心臓に寄生して成虫になる というようなサイクルで寄生する、蚊が媒介して引き起こされる寄生虫性の病気です。
*感染後、犬の体内で2~3か月かけて成長し、心臓へ移動します
*心臓や肺動脈に寄生後、成虫となり、ミクロフィラリアを産出します
血液検査(採血後の検査時間は10分程度)で感染の有無を確認することができます。また、感染していた場合はその重症度の評価が必要です。
1. 成虫抗原検査(採血後簡易キットを使用し即時に判定可能)
最も簡易的で感度の高い診断方法になりますが、フィラリアが成虫になってからはじめて検出されるため、感染してから6か月までは検出できない可能性があります。そのため、「予防ができていなかった期間がある場合」は、初回検査結果が陰性であっても予防薬をしっかり内服し、6か月後に再検査を行うという2回の検査で確実な検査結果が得られます。
2. 集中法
顕微鏡で、血液中にミクロフィラリアの存在を確認する方法です。ミクロフィラリアは、雄雌のフィラリアが犬の体内に揃うと産まれ、血液中で確認できます。注)血液中にミクロフィラリアが出現するまでは感染してから6か月かかるとされており、予防薬を飲んでいなかった犬に検査をしても直近の6か月の間の感染を否定することはできません。
3. 胸部レントゲン検査、心臓超音波検査
心臓でのフィラリア虫体の描出や心臓及び肺への負荷の程度を評価します。
重症度にもよりますが、内服治療をすることで症状の発現を抑え、不自由のない生活を送ることができます。実際に早期に発見できたほとんどの犬たちが治療しながら元気に生活を送っています。
治療の目的は合併症を最小限に抑えながら犬の臨床症状を改善し、あらゆるステージの犬糸状虫をすべて駆除することになります。
重症度 | 臨床症状 |
---|---|
軽 | 無症状、発咳 |
中 | 軽度症状+運動不耐、肺音異常 |
重 | 軽度・中程度症状+心雑音、肝腫大、失神、腹水 |
大静脈症候群 | 重度の沈鬱や虚脱、血色素血症、血色素尿症 |
図)重症度分類
主に選択されるのは内科治療になります。外科治療はよほど重度のフィラリア寄生が認められた際に適応となります。
1. 内科治療
フィラリア駆虫薬を月に1回(イベルメクチン)内服する方法
②①に加えてボルバキア除去治療のための抗生剤を服用する期間と服用しない期間を周期的に繰り返す治療法(パルス療法)
注)お腹(消化管内)の寄生虫とは異なり、駆除した寄生虫がお尻から出てくることはありません。そのために、死んだ寄生虫による塞栓症などには十分注意が必要です。
★ボルバキアって何?
犬糸状虫と共生する細菌のことを言います。犬糸状虫にボルバキアがいなくなると生存できなくなる、もしくは生殖不能となることが知られています。
このボルバキアの除去に有効な抗生剤を使用することで寄生虫体内のボルバキアが駆除され犬糸状虫症の治療ができます。日本獣医師会誌 67;597-602,2014.
2. 外科治療
心臓内に多くのフィラリア寄生が認められ、重度の症状を伴っている際に選択されます。(手術中もしくは手術後、亡くなってしまう可能性も高い治療になります。)
フィラリア症は予防することで未然に防ぐことのできる病気です。また仮に罹患していた場合でも、重症度にもよりますが、合併症に注意しながらしっかり内科治療をすることで健康な犬と同様の生活を送ることができます。当院では、そういった犬たちのフィラリア症の検査や継続治療をしっかりサポートしております。
今回はフィラリア症の治療に関してお話しいたしました。「保護犬」はもともと予防医療を受けていないために、未然に防ぐことができる病気を持っている子が少なくありません。しかし、しっかり医療ケアを受けることで元気に幸せに生活することができます。「保護犬」を迎えた際、人馴れしていなかったり、病気にかかっていたりと大変な面があるかもしれません。ただ、心を寄り添わせて築き上げたご家族と「保護犬」の関係はとても深いもので、将来かけがいのないパートナーとなると思います。次回はバベシア症に関するお話をいたします。
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