犬のコラム

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犬とストレス⑤~長年連れ添ってきシニア犬と、ゆっくり過ごす穏やかな時間~

みなさまこんにちは。
 

今日はシニアになったわんちゃん達が感じているストレスの軽減方法についてお話しします。長く一緒に連れ添ってきたシニアわんちゃんがいるご家庭のみなさん。彼らは自宅でどんな日々をすごしていますか?眠る時間が増えたり、運動量が減ったり、食が細くなったり、歩きづらくなったり、しているかもしれませんね。それはとても自然なことです。急で著しい低下が起きていない限りは、ゆっくりと進むその変化に寄り添って過ごしていただく。それで構いません。ただし、そんな彼らの日常生活のなかには、ストレスの原因になることがいたるところに潜んでいます。彼らのペースでそれをゆっくり受け入れながら過ごしていている姿はとってもとっても愛おしい。そんな姿を少しでもサポートできると、私たちはとても嬉しく感じます。
 

シニア犬の変化

老齢犬になると、目が見えづらくなったり、耳が聞こえづらくなったり、関節が硬くなったり、人間でも想像しやすいような体の変化も起こるため、特別になにをするわけでもなく日常的に小さなストレスを抱えている可能性があります。それに加えて、できていたことがそれまで通りにできなくなるジレンマなど、様々な理由からストレスを感じやすくなります。
また、感じたストレスから体調を崩すことも珍しくありません。そんな彼らになるべくストレスなく過ごしてもらうために、ご家族にはたくさん観察していただき、グッズや周囲の助け、動物病院もフル活用して一緒に生活を楽しむ工夫を考えましょう。
 

・お散歩
特にこの時期、ご高齢のわんちゃんたちにとってお散歩はとってもハードルが高いもの。なるべく寒い日や場所を避けて、場合によっては「風にあたる」「用を足す」程度のだっこのお散歩で、気分転換をするだけでも十分です。歩くことが辛くないわんちゃんには、たくさん休憩を挟みながら適度な運動を促してもよいでしょう。他のわんちゃんや人間を見かけることもよい刺激になります。
 

・軽い運動や知育
外で体を動かすことだけが運動というわけではありません。おうちのなかで体を動かしてみましょう。関節の弱い子や、体の小さな子にとっては室内でのアクティビティも十分な運動になるでしょう。その際に、頭への刺激も一緒に与えるとよりアクティビティが質のよいものになります。たとえば小さい時に遊んでいたコングに少量のおやつをいれて、コロコロ転がしながら食べさせてみたり、小さなカップをいくつか逆さまにおいて、どのなかにおやつがはいっているか当てるゲームをしてみたり。それを、見せながら距離のある場所に置いて、そこまで動いてもらう、などすこし部屋を大きく使ってやってみましょう。子犬の頃と同じおもちゃも、現在のゆっくりとしたペースに合わせて使用することができますよ。また、近年は老齢犬用の知育おもちゃも多数販売されているので是非チェックしてみてください。
 

・浅い睡眠・生活のリズム
体力的に疲れやすいため、シニアわんちゃんたちは眠る時間が長くなりますが、そのなかでも生活のリズムを作ってあげることは非常に大切です。日中よく眠り過ぎてしまうと、昼夜逆転し夜に起きる時間が長くなってしまい、夜泣きや徘徊などの行動を助長させてしまうことになります。ご家族の生活とリズムがずれてしまうと、わんちゃんにとってもストレスとなりますし、ご家族の介護の難易度も上がってしまいかねません。日中にすやすやと寝ている彼らを無理やり起こす必要はないですが、暖かい日差しのある日には日光浴をさせてあげたり、たくさん話しかけてあげたり、逆に夜は消灯時間を決めてあげたり、部屋を暗くする工夫をしてみてください。それでもやはりシニアになると夜の眠りは浅くなり、深く眠らないことでのトラブルは絶えないかもしれません。様々な生活の工夫をしてみてもなお夜泣きが悪化する、などの症状がある場合には医療的介入が必要なことがあります。どこかに痛みがないか、体の不調がないか、ないならば睡眠をサポートする方法もあります。ぜひ動物病院で相談してみてくださいね。
 

・分離不安(別離恐怖症)
ご高齢になると、様々なことに不安を感じやすくなます。とりわけ信頼を置いているご家族が不在になることで不安が増したり、どこかへ出かける程度であっても、慣れない環境への順応が遅くなります。周囲の変化に不安を感じ、大きな声で泣いてしまったり、物を壊してしまうかもしれません。これらは老齢犬特有なものではなく、若齢のころからもみられる症状でもありますので、分離不安の症状がみられた場合には若い頃から少しずつご家族とのトレーニングをすることで悪化を防ぐことができるでしょう。シニアになり脳の神経伝達物質の分泌が減るようになると、認知能力も低下しますし、五感の衰えも理由の一つかもしれませんので、突然このような症状がでてしまうようであればまずは諦めずに、病院にご相談ください。
 

・寝たきり
長らく持病があったり、筋力が極端に衰えると、寝たきりになってしまうわんちゃんも多いですね。しかし、寝たきりの状態でも、適切な介護や介護用品の導入を取り入れることで彼らののQOLを高く保つことは可能です。当院に通院するわんちゃんの中では、高反発・低反発のマットを使い分けたり、より吸収性の高いペットシーツを使用したりすることから、姿勢維持クッション、マッサージ、車椅子、リハビリ施設、など多岐にわたり様々な方法でその子にあった適切な介護方法をご提案しています。寝たきりになってもご家族の愛情をいっぱいにうけて、とても幸せに暮らすことができる姿に、私たちは日々感動しています。自分で思うように動くことができないストレスは計り知れませんが、給餌、褥瘡、排泄のケアや頭痛管理を適切に行うことで劇的にストレスを軽減することができるはずです。
 

・ご家族の介護疲れ
毎日休みなく続く介護により、ご家族の多くが介護疲れの問題を抱えていくことになります。介護疲れは、介護離職やうつなどを引き起こすため、人間の介護事情として社会問題でもあるといえますが、わんちゃんの介護も同様です。何からはじめたらよいのかわからず、相談先もないことが介護するご家族にとって大きな負担になります。精神的・身体的負担が重なり、それまでの仕事を続けられなくなったり、不眠状態がつづいたり、生活が著しく脅かされることもしばしばあるでしょう。愛情をたっぷりそそいできたぶん、手の抜き方がわからないまま一生懸命になりすぎてしまうご家族のお気持ちは計り知れません。そんなとき、人間のように介護施設や介護師を頼ることがでたらいいですよね。動物病院は、そんな時にも相談先でありたいと思っています。近年は老犬ホームや犬の介護士なども増えてきていますし、獣医や動物看護師もじゅうぶんに知識を持っています。介護には正解はなく、一頭一頭にあった寄り添い方をみつけることが大切、と私たちは考えています。どうかお一人、家族内だけで抱え込まずに、一緒にわんちゃんのストレス軽減のお手伝いをさせてください。
 

さて今回の記事の中に登場した様々な症状は、ひとことで「認知症」とまとめられることがあります。これらの症状は放置すると寿命やQOLを著しく低下させる恐れがあります。また、認知症ではなく、なんらかの病気が隠れている可能性もあるので、できるだけ早期に発見して進行を遅らせることが大切です。「そろそろ歳をとったので認知症なのかな」と決めつけてそのままにせず、是非早い段階で動物病院にご相談ください。

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日本動物医療センター

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麻布十番犬猫クリニック

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麻布十番犬猫クリニック 宮古島分院

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本院にて豊富な経験を積んだ獣医師が診療を担当しています。トリミングも実施。

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