犬のコラム

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知っておくと安心!犬の肥満細胞腫 早期発見と治療について

  • 病気

 

犬の肥満細胞腫は犬の皮膚や皮下に多く認められる悪性の腫瘍です。
肥満細胞は太っているワンちゃんにあるわけではなく、私たちを含めもともと体のさまざまな組織に存在しており免疫反応に関わっています。
肥満細胞腫は基本的には悪性ですので放置してよい腫瘍ではありません。
早期に切除すれば完治するものもありますが、中には全身に転移して命を脅かす悪性度の高いものもあるので注意が必要です。

【原因】

はっきりとした原因は不明です。幼犬からシニア犬まで報告されています。
ボクサーやボストンテリア、ゴールデンレトリバーが好発犬種とされていますが、日本ではパグでの報告が多いとされています。

【症状】

肥満細胞は犬の皮膚や皮下に多く認められますが、さまざまな見た目をもち特徴らしいものはありません。肥満細胞はヒスタミンと呼ばれる炎症を起こす物質を蓄えて放出しますので、しこりの周囲が赤く腫れることや、胃潰瘍を起こして吐き気が出ることがあります。

【診断手順】

1:小さいからと油断せずに病院に行きましょう
2:細い針をさして中の細胞をみてみましょう
針をさして採れた細胞を顕微鏡で調べる細胞診という検査を行います。細胞の見た目から悪性のものかどうかの判断をする助けになることもあります。
3:全身の検査をしましょう
肥満細胞腫が転移しやすい臓器には、脾臓、肝臓、骨髄などがあります。全身の検査を行い転移の有無を調べていきます。

【悪性度】

腫瘍の悪性の度合いのことをグレードと言いますが、肥満細胞腫は以下の3つのグレードに分類されます。また、最近では良性と悪性の2つに分類する新しい分類法もあります。

・グレード1
最も悪性度が低いもの。皮膚の表面にできた1cm以下のしこりで周囲への浸潤もあまりしないため手術で完全に切除すれば治ります。

・グレード2
中間くらいの悪性度のもの。周囲の正常組織を含め広範囲に切除する必要があります。グレード2の中でも悪性度の高いものと低いものがあるためその他の検査を併せ慎重に判断し術後の補助療法を選択していく必要があります。

・グレード3
最も悪性度の高い腫瘍です。成長も早く急速に進行します。診断時にはリンパ節やそのほかの臓器に転移していることが多く、
腫瘍を手術で切除しただけでは根治に至らず補助療法が必要になることが多いとされています

【治療】

犬の肥満細胞腫の治療はグレードや診断時の進行具合によってさまざまです。

1) 外科手術
目に見えないレベルで腫瘍細胞が周囲の組織に浸潤していることがあるので完全な切除のためには腫瘍の周囲に2-3㎝の正常の組織をつけた状態で腫瘍を摘出する必要があります。顕微鏡レベルで腫瘍細胞が残っている可能性があるので摘出後、病理組織検査を行いグレードと周囲の腫瘍細胞の残存状況を判定します。

2) 放射線療法
外科手術だけでは腫瘍が完全に取り切れない場合には残存した腫瘍細胞を根絶するために放射線療法を行います。手術前の肉眼的な腫瘍塊を放射線単独で治療しても根治は望めません。緩和治療、補助療法として行います。

3) 内科療法
肥満細胞が全身に転移してしまった場合または将来的に転移病変が出てくることが予想される場合に用いられます。

・ステロイドホルモン
ステロイドホルモンは炎症やアレルギー反応を抑えるために使われる薬で肥満細胞の増殖を抑えたりヒスタミンの放出を抑制する効果があります。肥満細胞腫に対しても腫瘍を縮小させる効果があります。

・抗がん剤
細胞分裂を阻害することで腫瘍をコントロールする薬剤です。腫瘍細胞だけでなく正常な体の細胞の一部も増殖が阻害されるため副作用に注意する必要があります。

・分子標的薬
腫瘍に特異的な増殖メカニズムをターゲットにしてそれを阻害する薬剤です。
c-kitという遺伝子に異常があると肥満細胞の増殖が無制限に起こり腫瘍化する場合があります。この仕組みをブロックする薬剤を使うことで肥満細胞腫の細胞を選択的に抑制することができます。特定のターゲットにピンポイントに効果があるので効く場合効かない場合があります。

また、腫瘍自体への治療に加え、付随して生じる不快な症状を軽減する緩和療法も併用します。痛みを和らげたり、栄養補給、免疫を高めて、生活の質(QOL)を少しでも高く過ごせるようにサポートしていくことができます。

以上、簡単にご紹介させていただきましたが、肥満細胞腫は見た目では判断が難しいため
早期発見、診断が非常に大切です。スキンシップを兼ねて、頭の先から尻尾の先まで、よくよくさわる習慣をつけましょう。そして、しこりを見つけたら早めに獣医さんに相談してみましょう。

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