猫のコラム

猫のコラム

猫と妊婦さんの重要な感染症~トキソプラズマ症~
2020.04.13

 

「妊婦さんが猫を飼うと危険」「妊娠中に猫を飼ってはいけない」をということを耳にしたことはありませんか?
その噂の元となっているのが猫のトキソプラズマ感染症です。ではトキソプラズマ感染症とはいったいどのような病気なのか、何が危険でどう対処したらいいのでしょうか。

~トキソプラズマとは?~

トキソプラズマは原虫という単細胞微生物の仲間の一つです。大きさは幅3㎛、長さ5~7㎛の三日月形の原虫です。人間を含めたほぼすべての哺乳類と鳥類に感染能を持つことが知られており、世界的にみると全人類の1/3以上(数十億人)が感染しています。(国立感染症研究所HPより)

~どうやって感染するの?~

トキソプラズマの感染経路は主に3つです。

①妊婦さんから胎児への感染(先天性トキソプラズマ症)
妊娠初期に初感染した妊婦さんから胎盤を通じて胎児へ感染します。母乳などからは感染しません。
②便や土からの感染
トキソプラズマが含まれた土での農作業やガーデニング・子供と砂遊びした手、などから口に入る、トキソプラズマが入った土が付着した野菜をあまり洗わずに食べることなどから感染します。
③生肉からの感染
過熱が不十分なお肉、生ハムやローストビーフなどには生きたトキソプラズマが含まれている事があります。(トキソプラズマは中心部が67℃以上になるまで加熱することで失活します)
の3つです。

~人に感染するとどのような症状が出るの?~

トキソプラズマ症は健康な人では感染しても特に症状として現れません。
一割くらいの人で軽度な発熱、リンパ節の腫れ、倦怠感がでることがあります。
またトキソプラズマが感染した場合、虫体が体内から出てくることはありません。

~トキソプラズマに感染すると問題な人はどのような人?~
・免疫抑制状態にある人
臓器移植後などで免疫抑制を飲んでいる方や、免疫不全ウイルスに感染している方、抗癌剤治療を受けている方は重篤な症状が現れる場合があります。トキソプラズマは脳や眼に寄生することが多く、脳炎や視力障害、また肺炎を引き起こすことがあります。
・妊婦さん
トキソプラズマが妊婦さんに初感染すると胎盤を通じて胎児にも感染することが知られており、これを先天性トキソプラズマ症といいます。感染した妊娠の時期にもよりますが胎児への感染は10~70%ほどといわれています。
妊娠初期に感染するほど重症度は高く、赤ちゃんは流死産してしまうことがあります。また、妊娠が維持できて生まれてきたとしても水頭症、視力障害、脳内石灰化、精神運動機能障害などの重大な脳や眼の病気を発症することがあります。

~妊婦さんはみんなトキソプラズマに気をつけなくてはいけないの?~

いいえ、違います。妊娠中に初めてトキソプラズマに感染した場合のみです。
人間がトキソプラズマに感染した場合、生涯にわたって体内に虫体は残ります。日本人では約10%が感染しているとする調査報告がありますし、トキソプラズマに感染することは決して珍しいことではありません。
妊娠前にすでに感染していた方が妊娠しても赤ちゃんにはなんら問題はなく心配する必要はありません。すでにトキソプラズマの抗体が出来ているので感染することはないのです。しかし妊娠前にトキソプラズマに感染したことのない方が妊娠中に初めて感染した場合のみ胎児への問題がおきるわけです。

これから妊娠を望まれる方はまずトキソプラズマの抗体検査を行って感染歴があるのかどうか調べることが重要です。妊娠前から感染歴があれば、もうトキソプラズマについて心配する必要がなくなります。一方、感染歴がなかった場合、猫と一緒に生活するには注意が必要になります。

~なぜ猫だけトキソプラズマに関して注意が必要なの?~

前述のとおり、トキソプラズマはほとんどの哺乳類・鳥類に感染しますが、猫科動物以外の動物の体の中ではトキソプラズマは自分を包む袋を作って筋肉の中に潜んでいます。もし人間にうつるとするならば、感染動物の肉を生で食べた場合だけです(感染経路③)。ただしネコ科動物はトキソプラズマの卵のようなもの=オーシストを糞便の中に排泄します。このオーシストは一般的な消毒薬では殺すことができませんし、非常に丈夫なため土の中で数か月にわたって感染能を持ち続けます。これが感染源となってしまうわけです。(感染経路②)。猫と他の動物ではこういった違いがあるため、トキソプラズマ症においては特別な対応が必要になるわけです。

 

~どんな猫が危ないの?~

猫が初めてトキソプラズマに感染したとき以外はオーシストを排出する事がありません。
猫がトキソプラズマに感染しても、便の中に感染源であるオーシストを排出するのは初めて感染してから3日~3週間の間のみであり、排出されたオーシストが成熟して感染能を獲得するまでには24時間を要します。一度トキソプラズマに感染すると猫の体内の免疫が働いてトキソプラズマに対して抗体を作るためその後感染しても便の中にトキソプラズマを排泄することはありません。
なので、もうすでにトキソプラズマに感染したことのある猫は基本的に安全というわけです。危ないのはまだトキソプラズマに感染したことのない猫ということになります。
また猫も人同様、健康であれば重症化することはほとんどありません。

~猫がトキソプラズマに感染歴があるかどうか調べられる?~

動物病院で外注検査に出してもらうことが可能です。血液検査を行い、数日後に検査結果が届くでしょう。ただし一般的な検査ではないので事前に動物病院に実施できるか問い合わせておくことをおすすめします。
猫のトキソプラズマ抗体が陽性だった場合(すなわち感染歴があった場合)安心です。猫のトキソプラズマ抗体が陰性だった場合(すなわち感染歴がなかった場合)、感染したことのない妊婦さんは注意が必要です。

 

~妊婦さんが猫を飼っている場合に気をつけることは?~

しつこいようですが、感染歴のない妊婦さんが、感染歴のない猫と暮らす場合、注意が必要です。
1.飼い猫が感染しないために
・外に出すのはやめましょう。
・他の猫との接触は避けましょう。
・生肉は与えないようにしましょう。
2.飼い猫から妊婦さんにうつらないために
・猫の便には触れないようにしましょう。
・猫のトイレ掃除は妊婦さん以外の方が排便後24時間以内に行いましょう。
(オーシストが感染力を持つのに24時間くらいかかります。その前に虫体をのんでも感染はおこりません)可能ならば、熱湯消毒も毎回行えればより安心です。
・猫の便に汚染されている可能性のある土やほこりなどを触れないようにする。
(オーシストの感染能は数か月続きます。万が一にでもそういった土と触れ合うことは避けましょう。)

 

最後に

「妊婦さんにとって猫が危険」なわけではありません。自身と飼い猫ちゃんの感染歴を把握し、正しい知識を持っていれば、過剰にこわがることなくすてきな猫とのくらしをつづけていけます!妊娠したからといって決して愛猫を手放す必要はないのです。

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