猫のコラム

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猫の痙攣 知っておきたいこと

 

それはある日、突然やってきます。あなたが自宅でくつろいでいると遠くで大きな物音がしました。「タマったらまたいたずらして!何してるのかしら?」と思って見に行ってみると…
 
『愛猫が痙攣して泡を吹いて倒れている!!』という衝撃的な光景を目の当たりにします。
さっきまで元気に走り回っていたのに、どうして!?何で!?誰もがそう思うでしょう。
痙攣発作を起こしている猫ちゃんは非常に苦しそうで、その光景は思わず目を背けたくなるようなものでしょう。一体どうして、こんな事に…。
原因が分からないだけに、とても不安でいたたまれない気持ちを抱かれると思います。
 
猫が痙攣発作を起こしてしまう原因や病院で行う診断や治療についてご紹介させていただきます。

1.痙攣発作の原因

痙攣発作の原因は大きく分けると以下の三つに分かれます。
 
・頭蓋内疾患
・頭蓋外疾患
・特発性てんかん
 
頭蓋内疾患は頭の中の異常、疾患という事になります。具体的には、脳炎、脳腫瘍、脳出血、脳梗塞、外傷等が当てはまります。
頭蓋外疾患は頭の異常以外のものの総称で、具体的には心疾患や代謝性疾患(低血糖、電解質異常、高アンモニウム血症、高窒素血症など)が当てはまります。
特発性てんかんとは、上記のような明らかな原因が見つからず、その背景に遺伝的な神経異常が疑われる発作の事です。

2.痙攣発作の診断

頭蓋内疾患の場合、診断にはMRI(場合によってはCTも)が必須になります。また併せて脳脊髄液の検査、感染症の検査等も必要になることがあります。
 
頭蓋外疾患の場合では、ほとんどのケースが動物病院で血液検査をすることで、発作の原因を突き止めることが出来ます。また、心臓の検査(聴診、レントゲン、超音波エコー、心電図等)を実施することで、心臓性の発作の可能性もある程度判断する事ができます。
 
特発性てんかんは、上記の検査で異常が認められない場合の除外診断(明らかな原因が見つからないもの)や脳波の検査により診断されます。

3.痙攣発作の治療

治療は原因により様々ですが、基本的に以下の2つが治療の柱となります。その2つとは、根本的治療(根本的な原因となっている疾患や異常に対する治療)と、対症的治療(症状を抑えたり緩和したりする治療)です。
 
例えば頭蓋内疾患であった場合、脳腫瘍であれば摘出手術・化学療法剤・放射線治療、脳炎であれば抗生物質・ステロイド剤や免疫抑制剤に加え、抗痙攣薬・脳圧降下剤などが必要となります。
また血液の異常による痙攣発作の場合、低血糖であれば原因(膵疾患、肝疾患、腫瘍、敗血症、飢餓、アジソン病等)を特定しその原因に対する治療を行った上で、ブドウ糖の投与や、場合によってステロイド剤等も必要になることがあります。心疾患の場合は原因(不整脈、心拍出量の低下による脳虚血等)を突き止めることが必要ですが、多くの場合根本的治療は困難で、対症的治療が中心となります。
 
特発性てんかんの場合は、根本的治療は現在の医学には存在せず、対症的治療が中心となります。
 

4.当院における治療の実際

当院では年間約200頭の犬猫が「発作」の主訴で入院しています。その原因は様々ですが、特に頭蓋内疾患や特発性てんかんを疑う症例で発作が止まらない場合は、まずは前述の抗痙攣薬を使って発作を止めることを試みます。
抗痙攣薬の投与で発作が止まらない場合には、飼い主様とご相談の上、麻酔薬を用いて眠らせることで痙攣を止める治療を試みる事もあります。
 
なぜ麻酔薬を用いてまで発作を止める必要があるのかと言うと、発作を短時間に何度も繰り返す「群発発作」や、発作状態が15~30分以上続く「重積発作」では、脳の神経細胞が不可逆的(元に戻らない)な損傷を負ってしまうことがあるからです。その場合、例え発作のコントロールが出来ても、後遺症として神経機能に異常が残ってしまうことがあります。
 
以上のような治療を行った結果、ひとまず発作が落ち着けば、必要に応じて脳圧降下剤やステロイド剤の投与を行い、状態がある程度安定した段階で診断の為のMRI検査をお勧めしています。
 
もしあなたの大切な愛猫が痙攣発作を起こしてしまったら…
飼い主様は大きなショックを受けて動揺してしまうと思います。愛猫がそのまま亡くなってしまうようなことは稀ですので、まずは落ち着いて以下の対処を試みてみましょう。
 
・猫ちゃんがケガをしないように、周りを片づけましょう
・柔らかい毛布などで優しく包んであげましょう
・猫ちゃんをキャリーに入れて、動物病院へ連れていく準備をしましょう
まずはこの3つです。
 
更に余裕があれば、
・動画を撮る
・発作は何分くらい続いたのか?
を記録できると、診断の上で非常に重要な手掛かりになります。
 
どうして発作を起こしてしまうのか、その原因と対処方法がある程度分かっていれば、少し落ち着いて対処できるかもしれません。
大切な猫ちゃんの安全が確保できたら、まずは当院へご連絡ください。24時間365日、いつでも皆様のご相談をお受けしております。

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