猫のコラム

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猫の呼吸が速い!考えられる病気と対処法

 

ご自宅の猫ちゃんの呼吸が急に荒くなってしまったり苦しそうな様子が見られたら飼い主様としてはとても心配ですね。
では、実際に呼吸が速いと判断する基準や、具体的にどのような病気が考えられるのかご紹介したいと思います。

1.猫の正常の呼吸回数

まず、猫の正常の呼吸回数はどれくらいでしょうか。
猫の場合、毎分20〜40回程度、また寝ているときは15〜25回程度と少なくなるのが通常です。特に寝ている時の呼吸回数を見ることは重要で、安静時の呼吸が速い場合は何らかの病気が隠れていることもあります。興奮して一時的に速くなっているのか迷った際は、安静時呼吸数を数えてみると良いかもしれません。

2.猫の呼吸数の測り方

愛猫が安静時(寝ている時など)に、1分間、胸の上下運動の回数を測ります。胸が上下して一回の呼吸とカウントします。
10秒間測定して6倍、または15秒間測定して4倍することで、1分間の呼吸数とすることもできます。例えば10秒間あたり4回胸の上下運動があった場合、呼吸数は1分間あたり4×6=24回となります。
日頃からお家の猫の呼吸数が大体どのくらいかを意識してあげることで、異常にも気付きやすくなるかもしれませんね。

3.猫の異常呼吸の種類

・呼吸回数が多い(多呼吸)
・肩で息をしている(肩呼吸)
・鼻の穴を大きく開いて呼吸をしている(鼻翼呼吸)
・口を開けて呼吸をしている(開口呼吸)
これらは全て猫にとっては異常な呼吸です。猫は人間や犬と違い「鼻呼吸」をすることが普通の動物です。口を開けて呼吸をしている場合、非常に苦しい症状であることが多く危険なサインとも言えます。口を開けていれば異常に気づきやすいかもしれませんが、口を閉じていても呼吸回数が速かったり苦しそうに肩で呼吸をすることは開口呼吸の一歩手前の段階です。もしこれらのような呼吸が見られたら、すぐに動物病院に相談することをお勧めします。

4.猫の呼吸器

 

 
呼吸器のしくみ(構造)は空気の通路である気道系と【鼻・口、咽頭、喉頭、気管】ガス交換の場である肺胞系【気管支、肺】からなります。気道系では外気の加湿と加温を行い、冷たくて乾いた空気の流入を防いだり、気道に入った異物を排除するといった働きをしています。肺胞系では主に酸素を取り込み、二酸化炭素を排出するガス交換を行っています。
呼吸が速い時、この気道系のつまり(例えば鼻詰まりなど)が原因で起こる場合と、肺でのガス交換ができなくて(例えば肺水腫など)で起こる場合があります。

5.猫の呼吸が速い場合に考えられる病気

猫の呼吸が速い時に考えられる代表的な病気をいくつかご紹介します
 
<呼吸器の異常による呼吸促迫>
・猫カゼ(猫ウイルス性鼻気管炎)
猫の呼吸器疾患のうち最も多い病気が猫カゼです。原因としてはヘルペスウイルスやカリシウイルスによるものが一般的で、鼻水やくしゃみ、目ヤニや発熱、元気がないなどの症状が見られます。猫の鼻の穴は小さく、鼻水の影響で鼻道の閉塞で呼吸がしづらくなるため、開口呼吸をしたり呼吸が速くなったりします。悪化すると肺炎や重度の結膜炎に繋がる可能性があります。
治療は抗ウイルス薬であるインターフェロンや消炎剤、二次感染予防に抗生剤を使用します。慢性化してしまった場合や子猫の時に感染してしまった場合は、一時的に症状が改善してもストレス時や免疫力が低下した際に症状の再発を繰り返すことがありますので、早めの治療が重要になります。
 
・猫喘息
猫喘息のはっきりとした原因は解明されていませんが、多くはダニなどのハウスダストやタバコ、花粉等のアレルゲンの吸引が関係していると考えられています。猫は犬と違い咳をほとんどしません。猫喘息の症状として特徴的なのが急激な咳です。先ほどまで普通だったのに急にひどい咳をし始めた、ヒューヒューした音の聞こえる呼吸をしている、という場合猫喘息を疑い早めに動物病院に連絡をしましょう。
治療はアレルゲンの除去が根本解決の鍵になることもありますが、環境中の何に反応して喘息を引き起こしているのか見つけることは難しいため、多くの場合はステロイド剤や鎮咳薬、薬の噴霧療法(ネブライザーなど)を組み合わせて咳の管理をしていきます。
 
・猫の慢性気管支炎
気管支に炎症が生じて起こります。症状は咳と努力性の呼吸、食欲不振などです。重篤化すると肺炎に移行することもありますので注意は必要です。猫喘息に症状は似ており咳をしますが、喘息のような急に発症ししばらくすると落ち着くような咳ではなく2ヶ月以上慢性的に咳が続きます。
原因は様々で、ウイルスや細菌、真菌、寄生虫、また異物の誤飲や歯周病などから2次的に感染症を起こしていることもあります。
 
・猫の心臓病(心筋症)
心臓病により二次的に呼吸が悪化することがあります。血液の循環が悪くなることで肺水腫*1や胸水*2貯留が起こり、呼吸が速くなります。(*1肺水腫とは肺胞内に水がたまり酸素交換ができなくなることにより呼吸不全を起こす病態です。*2胸水とは胸に水がたまることで肺が広がるスペースを確保できずに呼吸ができなくなる病態です。)これらの場合緊急性は非常に高く、一刻も早く動物病院で酸素を吸入させながら胸水を抜いてもらったり利尿薬を投与してもらう必要があります。
なかなか普通に暮らしていて心臓病を早期発見するのは難しいものです。呼吸の悪化で病院に行って初めて心臓病と診断されることも多いです。心臓病になりやすい種類の猫(メインクーンやアメリカンショートヘア)はもちろん、中年齢を超えたら心臓の異常がないか健康診断に行き早期発見につとめたいですね。
 
<猫の血栓塞栓症>
この病気は先ほど述べた心臓病(心筋症)に付随することが多いです。心筋症では心臓の内腔が狭くなり血液が乱流を起こし血栓ができやすくなります。血栓が動脈につまることにより動脈血栓塞栓症を起こします。この場合、症状は急激に発症し、突然の強い痛みと、後ろ足に力が入らず腰が抜け歩けなくなり、激痛により呼吸が速くなります。
この血栓を溶かす治療は発症してから早ければ早いほど効果が期待できますので、このような症状が現れたらすぐに動物病院で診てもらいましょう。
 
<痛みや外傷による呼吸促迫>
・猫のケガ
特にお外に出る猫ちゃんに多いのが、高いところからの落下や交通事故、他の猫との喧嘩により外傷を負って痛みがあるために呼吸が速くなる場合です。お家の猫が外から帰ってきて一時的に興奮して呼吸が速くなっていることもありますが、その場合は1時間もすれば元に戻るか症状が軽減するかもしれません。もし良化がないならば、実は大きな事故で怪我を負っていて肺挫傷や肺出血を起こしている可能性もあります。命に関わる場合もありますのでなるべく早く動物病院に相談をしましょう。
 
<暑さによる呼吸促迫>
・猫の熱中症
夏場の暑い時期はもちろん、冬場の暖房のつけ過ぎなどでも猫が熱中症になってしまうことがあります。また、過度の緊張などで興奮しすぎて熱中症になったケースもあります。猫は汗をかかないため熱の放散が得意ではありません。高熱になった場合、口を開け、舌や気道を通しての水分蒸発を行い、呼吸数を増加させ外気との接触で熱を下げようとします。
苦しそうに呼吸をし、ぐったりもしくはフラフラしている、身体を触って(毛の少ない耳がわかりやすい)熱いと感じた場合、熱中症の可能性があります。怖がりさんや興奮しやすい猫、長毛種や短頭種、毛が黒い猫は熱を身体に閉じ込めやすく熱中症になりやすいです。部屋の温度・湿度の管理とこまめな水分補給を心がけましょう。

おわりに

猫の呼吸が速いといっても原因は多岐にわたります。病気によってじっくり治療していく場合もあれば、早急に処置が必要な場合もあります。呼吸が速い状態が続いたり、それに伴って元気が無い場合は早めに病院にご相談ください。
 
特に、猫は通常であれば口を開けて呼吸をすることはないため、口を開けてハァハァと呼吸していたら要注意です。また、舌の色も、正常な呼吸が出来ていればきれいなピンク色をしていますが、呼吸がしづらく十分に酸素を取り込めていない場合はチアノーゼといって舌の色が紫色になります。このような場合は緊急性が高いためすぐに動物病院で診てもらいましょう。猫の呼吸が速い場合は様子を見過ぎず、早め早めに病院に行くくらいがちょうど良いのかもしれません。

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