うさぎの鳴き声
言語を持たない動物たちは、いろいろな方法で飼い主様に気持ちを伝えようとします。
「お散歩連れていって」と“ワンワン”「ごはん欲しい!」と“ニャーニャー”
犬や猫は鳴き声をつかって自分の気持ちを伝えようとしますが、うさぎは表現があまり上手ではありません。甘えたい時に“クーン”とは鳴かないし、怒って“シャー”とも言いません。だからといって、決してうさぎが甘えないわけでも怒らないわけでもなく、彼らは彼らなりの感情表現をします。
小学生の頃、のぼり棒の横にうさぎ小屋がありました。夏は暑く冬は寒い場所で、遠慮のない子どもたちにかまわれても、彼らは鳴き声ひとつあげず落ち着いた先輩顔をしていました。うさぎはおとなしく温和で、寂しいと死んでしまう弱い動物と言われているのに「学校の子たちは強いな」とまださほど近い存在ではなかった当時のわたしは思うばかりでした。そんな小学校生活も折り返しを迎えた頃、わが家に元気な男の子がやってきました。 それがわたしとうさぎとの本当の出逢いです。
小柄な体に少し短い立ち耳の彼は、今までわたしの知らなかったうさぎの感情表現でたくさん気持ちを伝えてくれました。その愛らしい容姿に似合わず、外に出せーと“ケージを ガジガジ”怒って“後ろ足をバンバン”この時点で、どうやら彼らは体で表現をするのが得意なようだとわかりました。そして、一緒に生活していく中で、体だけではなく、実は鳴き声でも何かを訴えていることに気が付きました。
うさぎの鳴き声は大体 4 パターンほどに分けられます。正確に言うとうさぎは声帯をもたないため、音という表現が正しいのかもしれません。
1つ目は“プゥプゥ”
わが家に馴染んでくると、プゥプゥと鳴きながら顎をこすりつけたり、頭をつき出してくる様子が多くなりました。 僕のお気に入り!と匂い付けをしたり、撫でて撫でてーと寄ってきているようでした。その姿は、ようやくわたしたちを信頼しリラックスしてくれたように思えました。
2つ目は“ブゥブゥ”3つ目は“ブッブッ”すこし似ていて個体差もありますが、“ブッブッ”は勢い余って出てしまう感じ。反して“ブゥブゥ”はあまり 機嫌が良くないサインで、スタンピング(いわゆる足ダン)をしながら、不穏な眼差し でこちらを見つめていることが多いです。意外と短気な性格も、うさぎの魅力のひとつ、と思ってしまうのが悔しいところです(笑)
最後に、恐怖や危険を感じた時に“キー”といった鳴き声を出しますが、怖い思いをさせなければうさぎのこの鳴き声を聞くことはありません。わたしは以前、祖父母の家の庭でリードをつけてうさんぽをしていた時に、ものすごい勢いでジャンプしキーキーと猿のような鳴き声をあげる彼を目にしました。田舎町で野生動物のにおいが残っていたのかもしれません。よほど怖かったのか、その後は息が上がり、助けを求めるようにぴったりとわたしにくっついていました。幸い、大事には至らずすぐに落ち着いてくれた様子でしたが、警告サインは必ずしも恐怖が原因とは限りません。周りの環境や体調面での異常を確認し、ケージに肢をはさんでいないかなど、原因を探ることが大切です。後にも先にも、この鳴き声を聞いたのは 1 回きりでしたが、命に関わることもある警告サインなので、その後のケアにも気を付けてあげましょう。万が一、興奮がおさまらず呼吸速迫(安静時は1分間に30~60回)場合、あるいは警告サインの原因が見当たらない場合は、みえない病気が潜んでいる可能性も考えられるため、速やかに病院にご相談ください。
一緒に過ごしていると、彼はわたしが今まで知らなかったいろいろな表情を見せてくれました。夏の暑い日に、“バタッ”と横になり、びっくりするほどの勢いで見せる白いおなかも、ひざの上で“スピー”とすやすや寝ているせなかも、彼と出逢わなければ知らない姿ばかりでした。今、わたしの横に彼はもういませんが、彼よりすこしやんちゃな弟が、元気いっぱいに、また新たな『声』を届けようとしてくれています。天真爛漫な弟をみると、ふいに、小学校のうさぎたちを思い出します。
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