業界の課題と取り組み

Issues and initiatives

入院している動物の見守り問題

入院している動物の見守り問題

病院内で預かっている子をどのように看護するのか。特に入院の場合、容態の悪化・急変の可能性もあり、「夜間に誰もいない時間、目を離す時間=変化や急変の見逃しリスク」につながります。そこで当院では獣医師と愛玩動物看護師が交代で24時間看護できるシステムを採用しています。

深夜であっても獣医師、愛玩動物看護師あわせて4名以上が緊急対応および看護を担当します。以前は当直のような形で昼間から夜間そのまま続けて勤務する形でしたが、夜間でも日中と同じクオリティで看護できるよう、シフト制で1ヶ月間の夜勤生活を行う形に変更しました。体力の落ちてくる年齢になっても夜勤を続けられるように、体内リズムを狂いにくくするためです。イメージとしては1か月間海外生活をするような感じでしょうか。(1ヶ月間の夜勤シフト明けは5連休が与えられます)

近年は人件費の高騰や人手不足も叫ばれるなか、この体制を維持するのは簡単なことではありません。スタッフが長時間労働とならないようシフト制で勤務時間を管理しています。
ご家族に寄り添い、より良い医療を提供するためには、スタッフの精神的・体力的余裕が必然だと考えています。

当院にはグループ病院(麻布十番犬猫クリニック)がありますが、そちらはサテライト病院として機能させ、入院や手術は設備・看護体制が整っている日本動物医療センターにて行う体制を築いています。現在のところ、医療に集中的に取り組む基幹病院とサテライト病院の組み合わせが病院経営とご家族様の安心を両立する1つの案だと考えています。

動物病院は「怪我や病気を治療する場所」だけとの思い込み問題

これまでの動物病院は「怪我や病気を治療するところ」と認識され、いかに良い治療を提供するかが動物病院の価値だと思われてきました。しかし、私たちの考える動物病院の像はもっと広い概念です。

ご家族様は心豊かな時間を過ごすために動物と生活をし、いつまでも健康でいて欲しい、病気にかからないでいて欲しいとお考えです。「病気になったら治す」こと以前に「病気にならない」ことの方に価値があるのです。つまり、獣医療者の立場からは、健康である状態を維持する手助けや、未病(発病には至らないものの軽い症状がある状態)の芽を摘み取ることが大切だと言えます。

二次診療機関とは異なり、一次診療に携わる者にとって医療のみに注力することは近視眼だと考えます。
私たちの事業領域はメディカル(医療)に限らず、ヘルスケア(健康管理)、ひいてはライフスタイル(生活様式)だと言い換えることもできます。

当院の理念である「想いをもって常に安心を提供する」の「常に」には、ご家族様と動物の一生涯を伴走する想いが込められています。各ライフステージ・ライフイベント毎の衣食住遊学の多様な分野において、私たちだからこそ提供できることはたくさんあるはずです。

こういった考えから当院では、動物病院の機能を「ご家族様と動物の一生涯に伴走すること」と捉えています。予防のご相談に応じたり、終末期の子を持つご家族様のお話を伺い寄り添うといった、治療を伴わない医療も重要な私たちの役割であることを明確にしています。

「ご家族様と動物と伴走すること」を体現すべく、3つの施策を打ち出しています。

1. ウェルネスサロンを新設し、幅広いライフステージに寄り添う体制を整備
2. 総合医療パッケージプログラム「ウェルネスプログラム」の提供
3. 絆イベントにおける予防医療の啓発

動物病院は「怪我や病気を治療する場所」問題

1. ウェルネスサロンを新設し、幅広いライフステージに寄り添う体制を整備

治療の機能を持つ「メディカルケアセンター」とは別に、2020年より「ウェルネスサロンcocoe」を新設しました。

ウェルサロンcocoeでは、予防・未病・シニアなど、動物のあらゆるライフステージに寄り添うことを目的としています。予防医療や美容に対応するほか、ご家族様のご心配・ご不安ごとをお伺いし、安心して動物と暮らせるお手伝いをします。シニア期や難治性疾患の継続的ケアなどの治療は伴わないものの獣医師には相談されたい、という際にも多くご活用いただいています。

状況に応じて動物の同伴をせず、治療を行う診察室とは異なる特別な空間にてご家族様と獣医師の1対1でじっくり対話を重ねます。グリーフカウンセリングも行っています。

2. 総合医療パッケージプログラム「ウェルネスプログラム」の提供

ワンちゃんや猫ちゃんには、病気を未然に防ぐ予防医療が存在します。混合ワクチン接種や狂犬病注射、寄生虫対策がそれらにあてはまりますが、それら基本となる医療に、定期的な検診や検査をセットにし、包括的に健康を守るのがこの「ウェルネスプログラム」です。

ご家族様のお考えや動物の健康状態・年齢によってプログラムの内容を3つに分けています。病気になったからお越しいただくのではなく、健康を守りにご来院いただくプログラムです。

3. 絆イベントにおける予防医療の啓発

「動物が健康で美しく長生きするためにできること」をテーマに、犬・猫・うさぎプロジェクトチームや救急チームが、獣医師・愛玩動物看護師・トリマーの垣根を越えてご家族様向けに情報発信を行っています。メーカーのご協力も得ながら、過去にはダイエットや、予防歯科、シニア犬の相談に関するイベント、防災啓発イベントを開催したことがあり、今後も定期的に活動します。新館の一階スペースにて実施しています。

保護犬・保護猫問題

ワンちゃんや猫ちゃんたちは今や家族です。しかしながら、残念なことに日本にはまだ捨てられる子や、保護施設に預けられる子がたくさんいるのも事実です。当院では、それら問題に対し少しでも力になれればとの想いから、下記の団体様のプロジェクトに賛同、活動に協力しています。

保護犬・保護猫問題